cancheerの考え方
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炭酸締出し、わざわざ政治がやること?

日付

2006.05.17

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コーラーは大好きです。ついついのどが渇くと、無性にあの味をのどに注ぎたくなります。ただ、この数年は月に2缶ほど飲むくらいですし、ダイエットコーラーばかり。こうした、体によくないと言われるジャンクフードたちに、いよいよ政治がメスを入れ始めました。肥満大国、アメリカの取り組みです。

 

子どもの肥満増、米国の全公立校で炭酸飲料「追放」
クリントン前米大統領は5月3日、米国の公立学校からダイエット、ノンカロリー以外の炭酸飲料を締め出すことに米飲料協会(ABA)など飲料業界が同意したと発表した。米国では子どもの肥満、太りすぎが社会問題になり、学校でのジャンクフードや炭酸飲料販売がやり玉に挙がっていた。
 米心臓協会やクリントン財団が飲料業界と交渉していた。発表によると、小中学校では水のほか、加糖していない100%果汁、牛乳などに限定する。高校では、それらに加えて、ダイエットタイプのソーダ類やスポーツドリンクなど1本当たり100キロカロリーを超えないものを認める。
 09年9月に始まる学年までに、全学校が対象になり、3500万人の児童、生徒が影響を受けるという。子どもの頃に肥満だった前大統領は「アメリカの子どもがより健康な生活を送るために、これは重要で勇気ある一歩だ」と語った。 (朝日新聞、2006年05月09日)

 


アメリカにいたとき、肥満の人の多さにあらためて驚いたものでした。ノッシノッシと歩いている人が、買い物カゴにどっさり食料をのせ、レジとレジの間の細い通路をいっぱいに通り抜けている様は、ついつい余計なことを考えてしまいます。たとえば、もっと自分の食欲を戒めればスマートになるのに・・などと、感じてはいけないことが脳裏をよぎってしまうのです。「肥満=自己抑制ができない=能力がない」とは、いかにも短絡的な見方です。それでも、あの理不尽な、つまり改良の余地があるように見える買い物カゴの中身を見てしまうと、邪念が浮かんでくるのは我ながら困ったものです。

 

HOW BILL SEALED THE SODA DEAL
Although the 42nd President surely remedied the coolness and girl problems, the matter of the fat dogged him ever after. From his McDonald's jones to the quadruple-bypass surgery that eventually laid him low, Clinton has long been a one-man case study of the U.S.'s food crisis―the compulsiveness, the consequences, even the shame.

And now he might be the face of recovery. The Clinton Foundation, the American Heart Association and the nation's three biggest beverage manufacturers―Coke, Pepsi and Cadbury Schweppes―last week announced an agreement to begin rolling back America's growing obesity epidemic in the place they can do the most good: the schools. Beginning now and progressing through the 2009-10 school year, the manufacturers will kick high-calorie, sugary drinks out of school vending machines and replace them with bottled water, unsweetened fruit juices, low-fat milk and sugar-free sodas―all served in smaller portions. And that's only the first move in Clinton's campaign to fight fat. His foundation is planning to turn its attention next to vending-machine snack foods and cafeteria lunches and is even in negotiations with fast-food companies to reduce the fat in their restaurant fare. (TIME、May 15, 2006)

 

少し長い引用でしたが、タイム誌の記事にもある通り、心臓手術から回復したクリントン前大統領は、健康問題に一層の関心をもつ精力的な活動を展開しています。その活動は主に、クリントン財団を基盤にしたものです。そして、学校から炭酸飲料などの甘〜い飲み物を一掃するという試みについても、記者会見の様子が、同サイトのニュースのひとつとして掲載されています。米国の2/3の大人が太りすぎだとされる中で、子供の頃から危機的な状況にある子も15%を占めます。必ずしも長寿を目指すための肥満対策ではありませんが、ひとたび成人病にかかってしまえば、個人は治療のための人生を強いられ、政府も膨大な医療費負担を迫られることになります。本当は、前職大統領が取り組む問題ではなく、現政権の重要な政策課題にしなければならないことだったのです。

 

“Soda Deal”(ソーダー取引)と表現されている今回の合意は、Coke、Pepsi、Cadbury Schweppesという三大メーカーの歩み寄りで成立したものです。クリントンも企業の態度を高く評価しています。しかし、不満の声も少なくありません。なぜなら、登下校時の生徒は、砂糖のたっぷり入ったジュースを簡単に買うことができ、また、企業は学校でも別の飲料を売ることができるのです。他方、クリントンは、次のターゲットを校内の菓子自販機と考えています。これも、子供たちを無駄に太らせる温床だとされています。ブッシュ大統領がイラク、イランと戦いっているとき、クリントンは、エイズや肥満との戦闘態勢に入ったのです。人生をジャンク化していく生活習慣との戦いとは、実は、個人の努力に帰するものではなく、政策的な課題なのだということを肝に銘じる必要があると思いました。

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日本では、各メーカーともに「健康」をかなり意識しています。国民(消費者)の意識が高いからでしょうか。したがって、政策で誘導する必要はない、とたいていの日本人なら考えるかもしれません。しかし、僕はアメリカの事例を見ながらこうも思います。社会問題をしっかりと話し合う素地は、このような身近なことから始めるべきだ、と。それがなければ、無知な国民はいつまでも優秀な企業や官僚に頼りきりで、気付けば、今日的な窮地をさらに深刻化させてしまうばかりなのです。

 

◆ 認定薬剤師 「はたともこ日記」ブログ
“ガン対策も重要だが、ガンに罹るリスクをいかに軽減していくかが、保健衛生上最も重要な課題”。・・つまり、食育改革の必要性を説明してくれています。クリントンは、「畜産農家が有力な支持母体」だったという小咄もあり。

◆ 堀素子さん「英語で読まナイト」
“NY Timesの記事紹介、「甘い飲み物、学校から追放」”。・・引退した政治家の活躍は目を見張るものがあります。NYTの参考和訳が提供されていて、とても参考になります。

◆ A day in the life of Nagoya
“日本の常識だと普通に小中学校に甘味清涼飲料の自販機が設置されている事に疑問”。・・ナイスなツッコミ。「国民の平均知性の違い」との切り込みには、さすがの僕も腰がひけました(笑)。

◆ 給食万歳 All I Want for School Dinners
“以前から話題になっていたfizzy drink の規制についてクリントンが主導してるとは・・”。・・僕がアメリカにいた半年ほどの間に、Fizzyは飲まなかったですね。このブログでは、驚いた!と言う「牛乳」をメインに提起しています。

 

 

Posted by cancheer 02:46 AM | 固定リンク
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COMMENT

タイム誌愛読者仲間(笑)の“luckymentai”さん、こんにちわ。

そこに「成長する組織」が関与するから、なんでしょうね。有名な人を担いで、受け入れて、活動を広げていく組織。たとえば、柔道の何とか連盟の会長などを日本の政治家が引き受けても、組織は成長性をほとんどもたないし、政治家も票田を拾ったくらいにしか考えてません。これでは、他の一般の人は感心をもちません。

Posted by: cancheer: May 18, 2006 09:40 AM

アメリカという国そのものの評価は紅して、クリントン氏にしろビルゲイツ夫妻にしろ、功なり名を遂げた人が社会貢献に真剣に取り組むという人が多く見えるのはどうしてなのかなあ。日本にもいるのかも知れないけど、考え方の違いなんですかね。考えさせられますね。

Posted by: luckymentai: May 17, 2006 11:35 PM
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