cancheerの考え方
タイトル

またハリケーンがやってきますよ

日付

2006.05.31

hurricane.jpg

洪水。かつては、もっとも人類を悩ましてきた自然災害でした。治水技術の進歩とともに、人々はみずからの手で河川の氾濫を防ぎ、台風がやってきたときの増水時期なども何とか乗り越えてきました。しかし、政府による治水工事だけではすみそうにありません。自己対策を訴える声が強いのもアメリカならでは。

 

昨年8月末に米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナは、甚大な被害をもたらしました。あのニューオーリンズという大都市の8割を沈め、1800名以上の方が亡くなりました。やり場のない怒りは、全米を「総ウツ」状態にさせ、テロ以来の恐怖心を米国の人々に植え付けたと言います。世界最強の国の光景とは思えない映像の数々が、世界へ向けて報道されました。あれから一年、再び、ハリケーンの季節が始まろうとしています。自然災害ではありますが、一部には、事前対策の遅れ、貧困問題の放置、危機管理の不備などの「人災」が指摘され、山のように積み上げられた問題点には僕のような部外者でもただただ閉口するしかありません。

 

NewOrleansSkyline.jpg

 


一度冠水してしまった都市では、復興の動きが始まっていますが、その大前提はハリケーン対策インフラの整備です。タイム誌は、その工事の遅れを伝えるにとどまらず、工事の内容に関する反対の声をも掲載しています。ハリケーンの季節に向けてすでにタイムアウトです。万一、決壊などの事態に至れば、被災地の範囲は、カトリーナのときを越えるとの指摘もあります。タイム誌は、“自分のことは自分で”と皮肉ったタイトル。がんばろうということではなく、政府も他人も当てにするなという意味のようです。

 

YOU'RE ON YOUR OWN
 New Orleanians learned a valuable lesson from Katrina: Trust no one and nothing. They're not counting on the levees to hold or the government to rescue them this time. Neighborhoods like Broadmoor are recruiting block captains to canvass residents who have returned, noting which homes are occupied, who lives in flimsy trailers and which elderly residents might need help. In Gentilly, where many senior citizens died, residents are looking into their own text-messaging system for emergency alerts. Self-sufficiency is everyone's mantra, from civic associations to city hall. "We have purchased jet boats and sandbags," says Glenn Stoudt of the Lakeview Civic Improvement Association, before trying out a joke. "There are several arks being constructed, and the rats and mosquitoes are pairing up." That's calledhurricane humor in these parts.
Ask people in New Orleans about their hurricane plans, and they will give you a sad smile. These are people who saw the dead floating in the street, heard gunshots down the block and had to paddle their way to safety on a dinghy or a mattress. (TIME、May 29, 2006)

 

 


政治の力に託された復興と災害対策。適切な判断と対策のスピードは、口で言う以上に至難の業です。洪水を防ぐだけではなく、避難方法の確立や緊急時の通信手段の確保も始まっています。CNNの2006年版ハリケーン特集には、ハリケーンの仕組みの解説から、昨年の被害状況、そして最新のハリケーン予報まで掲載されています。ある程度は自分で勉強しておかなければ、命にも関わる事態を招くことになってしまいます。さて、日本では「台風」と呼び名が変わりますが、いざ、僕自身のこととなると、何もできてないバカさ加減に、やや呆れてしまうところです。災害対策先進国の評価の一方で、国民の意識には、たまに乗るジェットコースタくらいの話題という意識しかない人も少なくないでしょう。

 

ニューオーリンズ市長選、現職の黒人市長が小差で再選
 昨年8月末のハリケーン「カトリーナ」で深刻な被害を受けたニューオーリンズで20日、市長選の決選投票が行われ、即日開票の結果、黒人で現職のレイ・ネーギン市長(49)が白人のミッチ・ランドリュー州副知事(45)を小差で破って再選を果たした。  ニューオーリンズの人口は今も被災前の半数にも満たない20万人前後。特に3分の2を占めていた黒人の帰還は進まず、現在の人口は白人とほぼ拮抗する状態になっている。このため28年ぶりの白人市長誕生の可能性もささやかれたが、1回目の投票でトップに立ったネーギン市長が逃げ切った。得票率はネーギン市長が52%、ランドリュー副知事が48%で、現在の住民の人種比をほぼ反映する形になった。市長の任期は今年のハリケーンの季節が始まる6月から4年間で、米史上最大規模の復興事業のかじ取りを引き続き担う。 (読売新聞、2006年05月21日)

このハリケーン被害に関する報道を追えば追うほど、アメリカ的な部分が見えてくるようです。自己責任社会、自発的相互支援社会というアメリカのいい面と、所詮は、根本的な解決策を実行できないでいる(放置している)根強い問題点とが、明確になっていますね。

 

◆ 岩崎日出俊のブログ 「カトリーナは二極化社会に対する見方を変えたか」
“メディアはこの機会にアメリカが抱える貧困や不平等の問題について盛んに報道・・(しかし)アメリカ人の見方はあまり変わりませんでした”。・・へたな解決策は、余計な混乱を招くという教訓でもあるんでしょうか。興味深いです。

◆ Help Neworleans HP 「お世話になった街に恩返し」
“カトリーナの後の初のニューオリンズ市長選挙・・黒人の投票率は低下”。・・音楽の街で、音楽とともに救援活動を続けてらっしゃる方々のブログです。

◆ 気分屋は日々あお色 「NHKスペシャル『復興への行進』」を見て
“人間の頭脳は進歩しているけど、その情報を扱う人間は精神的には全く進歩していない”。・・本質ですね。あ〜、この番組、見逃しちゃったなあ。

◆ zitiken 「応益負担ではなく応能負担に」
“今回のカトリーナに現れた弱者切捨ての社会”。・・ハリケーンカトリーナの問題がアメリカの象徴。日本は今頃、そのアメリカを目指している、という問題提起をされています。

 

 

Posted by cancheer 05:39 PM | 固定リンク
この記事のトラックバックURL:http://kupppy.s57.xrea.com/x/mtsys/mt-tb.cgi/390
TRACK BACK
10年後の日本
いきなりTBごめんなさい。一緒にコメントしましょー。
「最新本にコメント!批評n比較」のサイトから
Posted at 2006.06.24 15:38
COMMENT

Hiroさん、

「対策」以上のことはなかなかできないですからねぇ〜。あろうことか、飽きてくるんですよね〜。そう言えば私の親友が、阪神淡路で九死に一生を得た人間なので、ぜひ、もう一回、彼に尋ねてみます。

Posted by: cancheer: June 2, 2006 12:08 AM

『気分屋は日々あお色』のhiroと申します。
TBありがとうございます。興味深く読ませていただきました。
”災害対策先進国の評価の一方で・・・” というのは同感です。
対策がある程度しっかりしてきたせいで、安心して傍観する人が増えたのかもしれませんね。

Posted by: hiro: May 31, 2006 10:54 PM
-
YAKM_Tekodeko_SF_234.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_377.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_197.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_269.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_579.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_770.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_208.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_614.jpg
YAKM_Tekodeko_Chinatown092.jpg
YAKM_Tekodeko_ikebukuro.jpg
YAKM_Tekodeko_SF182.jpg
-
このページの先頭へ戻る HOME