cancheerの考え方
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ひと足先に、硫黄島の星条旗

日付

2005.11.17

わずかひと月ほどの間で約三万人が命を落としました。大戦末期、日米ともに要所として激しい死闘を繰り広げた、この硫黄島。山の手線の内側の面積にもはるかに及ばない、小さな島でした。米軍がこの地を制した瞬間の写真が、全米を熱狂の渦に包みました。


「本物の英語」がお届けするのは、
映画・雑誌・洋書等のガイダンスです。

この物語は、 ふたりの共著(James Bradley with Ron Powers)です。



In this unforgettable chronicle of perhaps the most famous moment in American military history,
この忘れがたい歴史的瞬間は、もっとも有名なもの、アメリカの軍事史において

James Bradley has captured the glory, the triumph, the heartbreak, and the legacy
ブラッドリーはつかんだのは栄誉であり、勝利であり、悲哀であり、形見だった。

of the six men who raised the flag at Iwo Jima.
6人の男たちが掲げた 国旗を 硫黄島に。



この最も有名なシーンは、全米で政府のプロパガンダに使用されることになります。たくさんの犠牲を払った米国に、原爆投下の必要性を痛感させた戦いでもあったと言われています。



この硫黄島の戦いを、2004年『ミリオン・ダラー・ベイビー』でアカデミー賞を受賞したクリント・イーストウッドが、監督として再現します。戦後60年を経てよみがえる不幸な歴史を彼はどう描くのでしょう。撮影協力のために来日した彼に、石原都知事は、日本の国民感情への配慮を依頼したと言います。

今回、最大の話題になっているのは、日米双方の視点から映画を製作する点。



《Eastwood to show both sides in WWII battle》

Actor/director Clint Eastwood is working on two films that will tell the story
俳優/監督のイーストウッドは取り組む ふたつの映画に 伝えるのは物語

of the World War II battle of Iwo Jima from both sides.
第二次大戦時の、硫黄島を 両面から。

"Flags of Our Fathers," telling the U.S. perspective of the battle,
『硫黄島の星条旗(邦題)』が伝えるのはアメリカの視点 戦いの

and the tentatively titled "Lamps Before the Wind," telling the Japanese side,
そして仮題『風の前の灯火』が伝えるのは日本側

will be released simultaneously, Time magazine reports.
公開されるのは同時だとのこと、タイム誌は伝える。

Eastwood is scheduled to start shooting "Lamps" in February,
イーストウッドの予定は、撮影開始が『灯火』のほうで2月

Time says in the issue on stands Monday. "Million Dollar Baby" writer Paul Haggis wrote "Flags"
タイム誌は月曜の号で言う。前作を書いたハギーが『星条旗』を担当

while the companion film was penned by Japanese-American screenwriter Iris Yamashita, Time said.
他方のペンをとるのは日系の山下。

The two films will focus on the clash of cultures as well as clash of wills between U.S. soldiers and Japan's military, Time said.
2つの映画が光を当てているのは文化の衝突であって、戦いばかりではない 日米間の。


原作者ブラッドリーの話が、映画の公式サイトで紹介されています。硫黄島で星条旗を掲げたのは、何を隠そう、彼の父だったのですからあの6人のうち、3人は国に帰ることなく島で亡くなり、彼の父は帰国して1994年に他界します。


“In the beginning, I didn’t set out to write a book,
「最初、私は書くつもりでなかった 本を

I set out to find out why my father had been so silent about his experiences.
私が気になったのは父がかたくなに話さないことだった 彼の経験を。

It was only after speaking to many Iwo Jima veterans and relatives of the flagraisers that I thought of writing the book.”
話して初めて 多くの硫黄島古参兵や旗を掲げた仲間に 私が本を書くことを。」

“My father was a corpsman. He was constantly running from one broken body to the next.
「私の父は衛生兵だった。彼はつねに駆け回った 損傷を負った者たちの間を

He probably held 200 young boys in his arms as they were dying. He had a lot to not talk about.”
彼はおそらく200名ほどの若い連中をその腕に抱えた 彼らはそのまま死んでしまった。」


星条旗を掲げた6人。その中に父を抱えた作者が見出したものとは・・。映画が待ちきれない人はぜひ原作を手にとってみましょう。実は、その1章のみ、サイトで公開されています。



For these six, history had a different set of agendas.
この6名、歴史は異なる課題を与えた。

Three were killed in action in the continuing battle.
3名は死亡、戦闘で、戦いは続いていたのだ。

Of the three survivors, two were overtaken and eventually destroyed--dead of drink and heartbreak.
他3名の生存者のうち、2名もついにはおかしくなった 死は、酒と悲痛がきいたらしい

Only one of them managed to live in peace into an advanced age.
たったひとり、何とか生きた 穏やかに 高齢になるまで

He achieved this peace by willing the past into a cave of silence.
彼がそうできたのは、いとわなかった 過去を暗闇に葬っても。

My father, John Henry Bradley, returned home to small-town Wisconsin after the war.
(それが)私の父だった。戻ったのは小さな町、戦後のことだ。

He shoved the mementos of his immortality into a few cardboard boxes and hid these in a closet.
彼は押しのけた 生涯の形見を いくつかの段ボールに そして隠した クローゼットに。



さあ、イーストウッドは、この作品が米国の視点だとして、どう描くのでしょうか。戦時中、あの写真は、戦意の鼓舞に使われました。当時を振り返って、島にはためいた星条旗は、何を語りだすのでしょう。今年の記念式典にも、星条旗は掲げられていました。

また、日本の視点になったとき、もうひとつの作品が示すのは何でしょう。日本人のための作品になるのでしょうか。武士道精神を示すかのような屍の山を前に、美しい死だと位置づけるのか、哀れみの風景にするのか、非常に興味があります。


11月14日号のタイム誌では、早くも、この映画のことを記事にしています。よろしければ、タイムガイダンスをご覧ください。



▼死んでいった先輩方が眠るこの島は、小泉首相に限らず、一度は訪れるべきかもしれません。

「太平洋戦争における、硫黄島の戦いを描いた2本の映画を同時に公開」(期待大)
「“パールハーバー”の様に事実を無視し、」(観た観た)
「日本政府はこれまで収集した遺骨は約8500柱に」(虚しい)
「戦争プロパガンダ 汝の敵を知れ!」(米軍の作品)
硫黄島の戦いは、アメリカにとっての聖戦地(そりゃそうでしょう)
西竹一陸軍大佐、陸軍戦車第26連隊長
「父が突然言い出した どうやら日本は負けるらしいよ」(ふ〜む)
「神風特攻隊の特集番組を観た。」(一番つらい映像です)
「闘魂硫黄島〜小笠原兵団参謀の回想」
「あの戦争は何だったのか」(新潮社)
「東京都にありながら、太平洋の島で一般人の立ち入りが原則禁止」(?)



Posted by cancheer 06:19 AM | 固定リンク
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