cancheerの考え方
タイトル

ハウルの動く城で、世界も動く(下)

日付

2005.11.17

たっぷり堪能したこの作品には、一部の方の感想にもあった通り、いくつもの「?」がありました。それは映画が原作に比べて、多分に説明不足であったり、テーマを少々いじったりしているからだと思います。それを補足するために、宮崎監督のインタビューに着目してみましょう。もちろん、英語です(笑)。


「本物の英語」がお届けするのは、
映画・雑誌・洋書等のガイダンスです。

上編をご覧になっていない方はこちら


インタビューの記事はイギリスの新聞「The Guardian」のウェブ版からの引用です。公開が遅くなったイギリスで、宮崎監督が10年ぶりのインタビューに応じたというのです。

余談ですが、同誌は、イギリス唯一のフルカラー全国紙(the only British national newspaper to publish in full-colour)であり、国内最初のバーリナーサイズ(the first newspaper in the UK to be printed on the Berliner size, 470mm×315mm)を採用したばかりでもあります。さしずめ、イギリスの新聞競争は、現在、タイムやインディペンデントなどとのサイズ競争(The Times and The Independent to start publishing in tabloid or "compact" format)で、通勤客目当ての小型化か、読みやすさを重視した主流サイズかで考え方が大きく分かれているようです。


さて、本題に戻ります。


In the opinion of Pixar's John Lasseter, Miyazaki is "the world's greatest living animator".
ピクサーのジョン・ラセター氏の意見では、宮崎氏が世界で最高峰の現役アニメーターだそうだ。

According to the numbers, he is Japan's most successful film-maker,
数字で言っても、彼は日本最高の映画製作者でもあります。

with his 2001 fable Spirited Away breaking the domestic box-office record set by Titanic.
2001年、『千と千尋の神隠し』で越えた 国内興行記録を タイタニックの。


宮崎監督は『天空の城ラピュタ』(Laputa: Castle in the Sky)を制作するとき、イギリスのウェールズで見たものを参考にしたと言います。それは炭鉱労働者のストライキ(witnessed the miners' strike)でした。



I admired the way they battled to save their way of life,
「いいなあと思う 彼らが闘うんだ、みずからの生活をかけて

just as the coal miners in Japan did.
まさに炭鉱労働者は同じ、日本でも

Many people of my generation see the miners as a symbol;
多くの人々 私と同じ世代 見た 炭鉱労働者を 象徴として

a dying breed of fighting men. Now they are gone."
廃れる運命の闘う男たち 今はもういなくなってしまった。

"If it is a dying craft we can't do anything about it.
もし廃れるなら 技術が 私たちにはどうしようもない。

Civilisation moves on.
文明が進んだのだ。

Where are all the fresco painters now?
どこにいる 壁画の担い手は今?

Where are the landscape artists?
どこにいる 風景画家は?

What are they doing now?
みんなどうしてるんだ?

The world is changing.
世界は変わっていく。

I have been very fortunate to be able to do the same job for 40 years.
とてもラッキーだ できる 同じ仕事を 40年にもわたり。

That's rare in any era."
珍しいことだよ、どの時代でも。」



変化を許容する発言ですが、宮崎作品には、何かを破壊から守ろうとする姿勢がうかがえます(preserve their communities, and bucolic landscapes under threat of destruction)。特に、地域に自然に根ざしてきたものに対してのものです。変化を受け入れながら、何かを守ろうとする主人公(piggy in the middle)に、とりわけ関心を払ってきたようですね。僕には、非常に関心のあるテーマです。



"Personally I am very pessimistic, but when, for instance,
個人的に、私は悲観的です。が、たとえば、

one of my staff has a baby you can't help but bless them for a good future.
「私のスタッフのひとりに赤ん坊ができれば、それを祝わずにはいられない。

Because I can't tell that child, 'Oh, you shouldn't have come into this life.'
なぜならその子に向かって言えないから、“生まれてくるんじゃなかったのに”と。

And yet I know the world is heading in a bad direction.
でも私にはわかる 世界が向かっているのは悪い方向だと。

So with those conflicting thoughts in mind,
だから、ジレンマが私の中にあって、

I think about what kind of films I should be making."
私が考えるのは、どんな作品を作るべきかってこと。



この記事で特に賛同した点ですが、『ハウルの動く城』に登場する「荒地の魔女」(The wicked witch)なんかは面白いですね。いつのまにか大切な家族の一員のように(as a cherished family member)なっていますが、どこか頭のおかしいババア(some dotty old aunt)という印象はぬぐえません。宮崎作品ではこうしたキャラクターがコロコロとイメージを変えていく(Miyazaki makes them bounce around like pinballs.)のです。



"Well, yes. I believe that children's souls are the inheritors of historical memory from previous generations.
「そう、だから、私が信じているのは、子供たちの心は受け継ぐんだ、歴史の記憶を 前の世代から。

It's just that as they grow older and experience the everyday world
それはただ、歳をとって、経験する 実社会を

that memory sinks lower and lower.
記憶は沈んでいく より深く

I feel I need to make a film that reaches down to that level.
私が感じているのは、作る作品は そのレベルに届くこと。

If I could do that I would die happy."
それができたなら、私は安らかに死ねるよ。



まさに使命感ですね。宮崎監督の世界観が『ハウルの動く城』の中にもたくさん盛り込まれています。

ハウルが何の迷いもなく、ソフィーに、彼がもっとも大切にしている場所を紹介するシーンがあります。プレゼントだそうです。あたかも定められた運命のように、二人はその場所でのひとときを受け入れていました。美しい、しかも現実の場所でした。


HOWL: It's a present for you, Come see! You like it? It's my secret garden.
プレゼントだ、君への。来てごらん。気に入った?僕の秘密の場所さ。

SOPHIE: It's incredible! Did you use your magic to make this?
すごい。使ったの?魔法でこれを?

HOWL: Only a little just for helping weak flowers.
ちょっとだけさ。花にね。

SOPHIE: It's places gorgeous, Howl! It's like a dream... It'll seem so familiar yet I know I've never been in before... I feel so at home.
素敵な場所、夢のよう。なんだか見覚えがあるんだけど、来たことがないのに とても安らぐの。

HOWL: Come with me. Look there!
おいで。あれを見てごらん。



激しさを増す戦いの中、ハウルの疲れや痛みもだんだんひどくなってきます。しかし、彼はもはや逃げようとしません。戦火はいよいよソフィーのすぐ傍まで迫っていました。



SOPHIE: Let's run away! There's no use fighting.
逃げて。意味ないわ、戦っても。

HOWL: Why? I'm done running away. Finally, I've found something worth protecting with my life. It's you.
なぜだい?私は逃げてきたんだ。でも、ようやく見つけたさ、大切な、守りたくなるものを 私の人生をかけて。それが君さ。




運命論を受け入れつつ、敢えて大切なもののために戦いを続ける人々を、明るく、そして前向きに描いていく宮崎ワールド。そこにはいつも勇気づけられるものがありました。


最後に、同作品は音楽と主題歌が最高。とてもしっくりきた。



▼参考ブログ第二弾。なんか、人の意見を見すぎて、僕の理解のほうが変わってきたみたい(笑)。

「面白いのは、ソフィーは老婆の外見になった後の方が生き生きとしてる」(まさに!)
「高い方のDVDを買って・・音声が、DTS収録されているのが魅力的」(僕は多言語)
「ハウルの幼い頃の話しとか先生の元にいた時の話しとか……2時間じゃ短い」
「ダメな男を私の母性愛で立ち直らせよう」(*^-'*)>
「魔力の無くなった荒れ地の魔女・・あたしんだよ〜、ってオイ!」(賛成!)
「荒地の魔女はもっと大活躍しても良かった」(感想色々)
(日本語版)「ソフィー・・これなら二役にした方がよかった」(英語版の二役は嫌だったなあ)
「先日、原作を読んだおかげで全部意味がわかった」(一番ツライ感想)
「日本人の戦争観には、合わない」(面白い考察?)



Posted by cancheer 05:48 AM | 固定リンク
この記事のトラックバックURL:http://kupppy.s57.xrea.com/x/mtsys/mt-tb.cgi/289
TRACK BACK
映画「ハウルの動く城」
 ■ 本日の映画 『ハウルの動く城』 ★★☆+  つまり、ソフィーとハウルは似たもの同士なんですよね。  どちらも自分の内面を隠すために、片方は美しさをとりつくろい、片方は??
「猫ようかん出張所」のサイトから
Posted at 2005.11.17 11:26
cancheeR様、トラックバック有り難う御座いました!。
こんにちは、管理人のえなりんです。さて、cancheeR様、当方のハウルの記事にトラックバックして下さいましてまことに有り難う御座います。貴方のブログに”コメント”の欄が無かったので、当方も貴方の記事にトラックバックすることで、お返事を書かせていただきました。...
「万屋 Excite Blog 出張版」のサイトから
Posted at 2005.11.17 11:54
ハウルネタと紅白の司会に”みのもんた”起用
皆さん今晩は。ハウルネタで盛り上がっているのに、いきなり”紅白の話”。これが当サイトの趣旨である”万話”の真骨頂!。Cancheer様、ハウルの話は、DVD通常版に付いている特典ディスクを観たらまた書きますね。それにしても書くネタに尽きない映画ですね。...
「万屋 Excite Blog 出張版」のサイトから
Posted at 2005.11.17 22:09
ハウルの動く城
ハウルの動く城 上映時間 1時間59分 監督 宮崎駿 出演・声 倍賞千恵子 木村拓哉 美輪明宏 我修院達也 神木隆之介  映画好きだが全く映画興行収入(去年過去最高を記録)に貢献してないので、たまには自腹で。といってもファーストデイ。つーわけでハウル観...
「メルブロ」のサイトから
Posted at 2005.11.18 17:49
-
YAKM_Tekodeko_SF_234.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_377.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_197.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_269.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_579.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_770.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_208.jpg
YAKM_Tekodeko_SF_614.jpg
YAKM_Tekodeko_Chinatown092.jpg
YAKM_Tekodeko_ikebukuro.jpg
YAKM_Tekodeko_SF182.jpg
-
このページの先頭へ戻る HOME