cancheerの考え方
タイトル

格差社会の議論が示す危うさ

日付

2006.02.04


二極化の是正に関する議論が日本でも本格的になりそうです。これ自体は世界の動向とも合致したことですが、十数年前の日本に戻すというような対極的な議論が台頭しているのには辟易しています。「格差社会」なんて不毛な議論よりは、社会の底辺層の支援方法と表現してもらったほうが分かりやすいです。

 

「まあ、いいじゃないか」という、気楽&独楽コメントコーナーは、
書評、社会評論などを前向きに行います。英語はお休みです。


『世界、ちょいびき!』では、たまたま、世界経済フォーラムに関する特集を紹介しました。二極化や格差社会というのは、世界的なテーマではありますが、日本のような「勝ち組/負け組」という不毛な議論ではありません。貧困層を放置しないという社会的な仕組みの改善・改良を、あらたな視点で訴えているのです。


●信用されていないリーダーたちが集うダボス会議とは
    〜タイムガイダンス No More Heroes

「ダボス会議」(世界経済フォーラム年次総会)が閉幕。新しい時代の転換を予感させる内容でした。しかし、タイム誌の報道は手厳しかったです。「ヒーローはもういない」と題した特集になりました。日本政府は、同地で改革の成果を誇ったとのことですが、世界の関心度は低かった。理由は簡単です。日本で議論されている「小さな政府」議論は、もはや先進国の関心の的ではありません。それ以上に、成長と格差との矛盾にどう取り組むのかという点が重要なのでしょう。・・【続きを読む】
ぜひ、英語も楽しんでください。


小泉首相の「格差容認」発言や、格差拡大を招いたとする小泉改革の継続に、不安を抱く方もずいぶんいらっしゃるでしょう。ベストセラーになった『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』(山田 昌弘 著)や、『下流社会 新たな階層集団の出現』(三浦 展 著)を見るまでもなく、実感として社会格差は広がっています。企業や市場が変化を迫られている中、ウチの実家は個人商店を休業しました。しかも、給付を減らされた祖父母の世話を抱え、実負担がやたら重くなっています。つながりが薄くなった親戚の力も借りられず、再就職も容易ではありません。


    


景気が落ち込み、そのドン底から一部の企業が成長を牽引しているような現段階では、普通で考えても、貧富の格差は拡大しそうなものです。ただ、この「格差」は、多分に新しい現象を含んでいます。それが、ニートであり、フリーターというレッテルを貼られた人々です。生活の資金源として親が手を貸している点などが、問題の温床だと指摘されています。数年後には親がいなくなるわけですから、結果的には、上記の著者、山田氏が指摘する通り、大量の「不良債権化する若者たち」が生まれることになります。生活保護の対象になる人は拡大し、犯罪に走る人々も増えそうです。


「格差社会」を問題とする人々は、ホリエモン(堀江貴文氏)の逮捕で勢いづいています。彼を一種のヒーローとしてた期待していた田原総一郎氏も、自戒の念を産経新聞【GO】に語っています。堀江氏は、「みんなが平等」という疲弊した価値観をあざ笑った張本人です。そして、お金をもちになれるチャンスを自社の株で提供しようとした、言行一致のニューヒーローとしても歓迎されていました。



僕が常々思うのは、そろそろ間違った言葉の使い方をやめてもらいたいということです。でなければ、建設的な議論にはならないからです。「格差社会」とは単に、格差がある社会という意味で、共産主義者の理想郷でもなければ、ごく当たり前のことです。「憲法改正」にも似た感があります。憲法を変えることは、憲法自体で認められた行為なのですから。


では、格差が広がりすぎていることは問題ではないのか。それはその格差の中身によります。努力した金持ちになった人は称賛してあげたいし、その人が後続の人々に機会を与えようとするのは、素晴らしいことだと思います。ホリエモンの手法には否定的だった僕も、その存在には頼もしく思っていました。。


目先の「格差」を憂うより、「貧困層をなくす」という海外では当然の表現を使えばいいと思います。現在の生活保護の一部にある、実態を把握しない単なる生活費付与は、不正を促すだけです。施設への移住や就職訓練を実施する海外の貧困対策を参考にしてもらいたいです。いちいち、「一億総中流社会」の幻想を美化して、回帰を促す動きに、僕は反対です。リスクをとる人には、それだけの還元があっていいし、僕には、成功者を妬もうという気もありません。


また、「格差」よりも「フェア」であることが重要です。堀江氏の疑惑のように、企業の犯罪や不当な行為は、談合や密輸なども含めてたくさんあります。政府は、もっと本気で、ルールに基づいた厳正な対処ができるはずです。人員増加や懲罰強化などの具体化こそ、真剣に、情熱的にやっている人の心の支えにもなります。事業の失敗者には温かく、犯罪者には厳しいという区分けがまだまだ不透明です。


そして「格差」を反対するよりも、格差を登ることのできる多様なロープが必要です。僕が育ててもらった、技術移転の業界では、公的なアドバイザーが配置されています。その人選にはずいぶん違和感はありましたが、この仕組み自体は評価に値するものです。公的な投資は「モノ」ではなく、色々な分野で「ヒト」にしてもらいたいと思います。



1)公的な相談窓口をもっと増やし、開放的で支援的な社会。
2)ルール違反や犯罪行為には、もっと厳しい社会。
3)「貧困」の定義を明確にした、貧困対策を施す。


「格差社会」問題とは、「憲法改正」問題と同様、何が問題なのか、非常に分かりにくい言葉です。今日まで積み上げてきた改革の方向性が間違えていたとは思いませんし、十数年前の日本に戻りたいとも感じていません。要は、実質的な「結果平等」を求めて変化を拒もうとする動きに、僕は警戒してしまうのです。


僕自身は勝ち組でなければ、まったく裕福ではありません。小学校の頃から新聞配達をしたり、大人になっても、好んで「不安定」な暮らしをしています。よく不安を感じないねと、早くも終身雇用を宣言している友人からは嫌味を言われますが、いまだに意味がわかりません。日々勉強を重ねながら、新しいことに挑戦し続けることの何が悪いのでしょうか。他人の財産を脅かしたり、ウソをついたり、社会に対して無責任なことだけはしないという大前提です。


そんな僕が言うのは何ですが、関係者の努力のおかげか、今はとてもいい時代になってきたと思います。ちゃんと調べていけば、(多少まだ不備もありますが)相談できる場所もあります。「格差社会」に反対という言葉で、大局を見誤ることがないようにしてもらいたい、僕からのささやかな願いです。



▼とは言っても、世間的には議論沸騰です。ちゃんと耳は傾けないと・・。

“格差社会か平等社会か、一億総中流の崩壊”
  →ブログで情報収集!Blog-Headlineさん
“満腹した羊としてのニート、フリーター・・「自分らしさ」の神話”
  →カトラー:katolerのマーケティング言論さん
格差社会のテーマはもう10年くらい前から。生活実感と統計にはタイムラグ”
  →踊る新聞屋−。さん
“景気の上昇と伴い貧富の差が拡大するのは世の常・・戦前にもあった”
  →TNK Softwareさん
“私は年代が高いほど大きい政府、若いほど小さい政府を・・と思ってた”
  →tamyレポートさん
“日本の中産階級はどうして生まれてきたか・・戦争に負けたから”
  →彼がすべて悪いわけではないさん、 又三良(♂)さん
山田昌弘さんの著書、『希望格差社会』を読んで
  →内田樹の研究室さん
“格差社会の仕掛人は現政府ではないか・・また、解決できるのも政府”
  →瀬戸智子の枕草子さん
“自己嫌悪に陥った日本の社会に、第三者的視点で指摘してあげます的な内容”
  →セルフクエストのためのロハスな書棚さん
“セレブ化したいわゆる「勝ち組」のIT長者たちと、「負け組」の対比が酷く”
  →MARK-Iさん、NHK「日本の、これから」の第一回「格差社会」を見て
“「偉い人達の意見は判りました。でももっと会場の意見とかを・・」”
  →いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」さん、NHK特別番組を観ての連載
“希望格差社会とは自分が不幸であることを発見してしまった人々が多い”
  →H-Yamaguchi.netさん
“小泉改革のおかげで極めて厳しい現実が待っています”
  →小泉内閣の支持率が一桁台になるまでさん
“内閣府・・総研の「フリーターの増加と労働所得格差の拡大」というレポート”
  →土佐のまつりごとさん

 

Posted by cancheer 12:24 AM | 固定リンク
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