cancheerの考え方
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中国にとってアメリカは敵か味方か

日付

2006.04.24

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大西洋から太平洋に。時代の中心地が移りつつある今日、米中関係はその双璧です。ところが、中国国内の論調を読んでみれば、意外と現実的で、世界唯一の大国とどう向き合うかという文章が多いように感じます。先日の中国・胡錦濤国家主席の初の訪米も、その意義が称えられていました。【GO】

 

米中首脳会談、貿易・人民元問題で中国の明確なコミットなし
 20日に行われた米中首脳会談は、ブッシュ大統領が、2020億ドルに膨らんだ中国の対米貿易黒字縮小に向けた中国側の当面の対応について、胡錦濤・中国国家主席からコミットメントを得られないままに終わった。
 人民元問題では、胡主席は、一段の柔軟化に取り組んでいくことを保証した。しかし、これも米国製品の海外競争力強化や貿易不均衡是正のために人民元相場の大幅切り上げを求めている米国の要求を到底満たすものではなかった。
 イランの核問題への対応をめぐっても、両首脳は意見の相違を埋めることができなかった。ブッシュ大統領は、より厳しい国連の対応に中国の同意を取り付けたい考えだが、首脳会談で胡主席を説得することはできなかった。 (ロイター、2006年4月20日)

 


周囲の不安をよそに、米中首脳会談はつつがなく行われたようです。米中関係をあらたな対抗軸に見立てようとする論調は相変わらず根強いのですが、実際の両国は、非常に現実を踏まえた、戦略的なスタンスで互いを見ているようです。安心しました。僕なんぞが語るまでもなく、戦略とは、まずたくさんのカード(選択肢)を確保することから始まり、相手の様子を見ながら出すカードを決め、しかも後々のことまで考えて手持ちのカードをコントロールするという、非常に高度な知的プロセスです。お互いが戦略的であるということは、お互いにとって最悪のカードを切ることはまずないと考えていいでしょう。瀬戸際外交の国とは次元が違います。

 

そんな風に見ていると、日本人は、僕も含めて「戦略」的になるのが苦手な民族なのかもしれません。猪突猛進的、あるいは素直で潔すぎと言い換えてもいいでしょう。さて、その米中間の大きな違いは、民意の顕れ方です。アメリカは、何でもかんでも筒抜けになる自由国家です。野党が騒ぎ、マスコミが喚き、様々な人が次から次へと情報を公にする社会です。他方、中国は情報統制を行っていますから、国内外の情報が往来するには多少の時間がかかります。したがって、この米中会談を評価する場合、アメリカでは「得るものなし」との声が多くなり、逆に中国では、米中協調のもとでの世界秩序作りがいよいよ始まったとの報道になるのもうなずけます。

 

THE GREAT DIVIDE
"Chinese perceptions of the United States are deeply ambivalent," says Minxin Pei, China program director at the Washington-based Carnegie Endowment for International Peace. "They mix resentment and admiration, fear with respect, jealousy with the desire to emulate." So long as that volatile mixture constitutes a central, "brittle part of the national psyche," says Pei, there's always the possibility that these emotions will boil over.
With China's President Hu Jintao scheduled to make his first official visit to Washington as head of state on April 20, his nation's love-hate relationship with the U.S. is once again under the spotlight. Much is at stake. After all, the evolution―or lack of it―in the way China's leaders and the country's ordinary people view America will go a long way to determining the course of what is likely to be the 21st century's most important bilateral relationship.
(TIME、Apr. 17, 2006)

 

米中会談にあたって、タイム誌が着目したのは、中国側の対米観です。今、政治的な両者の関係は、大変良好なものになっています。しかもアメリカからすれば、敬意と警戒を抱きつつ、「対等」な交渉ができている珍しい友好国です。そんなアメリカに、中国人は好意を抱いているかという必ずしもそうではないようです。愛憎相反する強い感情(deeply ambivalent)がそこにはあると言います。

 

Public opinion polls conducted ・・ in Beijing, show that an almost schizophrenic attitude toward the U.S. extends far beyond the upper echelons of Chinese society. A survey in late 2005 showed that two-thirds of the respondents thought Sino-American relations had improved over the last year and that three-quarters of them liked American culture―but the U.S. was also rated as the world's most unfriendly country toward China. Some 56% said they didn't believe that Americans respect China. (TIME、同上)

 


北京での世論調査でも、中国の人々の複雑な対米感情が明らかになっているようですね。20世紀、アメリカは中国にとって、敵になったり味方になったり、その立場を目まぐるしく変えてきました。そして今日、彼らの目には、優れた経済的パートナーであるとともに、世界秩序を自国の都合で引っ掻き回す傲慢な国とさえ映っているようです。やっとの思いで世界に復帰してきた中国経済に対し、最近の米国は、過度に警戒感を強めています。中国の人々は、米国の妨害が経済成長のブレーキになりえることを、本気で恐れているのです。

 

会談でブッシュ大統領は、あっさり、台湾独立を支持しないと表明しました。政治的な争点が解消した以上、中国は、米国を怒らせないよう経済的な妥協や改革を示していくことになるでしょう。実は、日本も同じように振舞うことは可能だったはずです。ところが今の日本の指導者は、「靖国神社の問題が解決しても、また別の問題が出てくる」と言って、わざわざ中国への警戒心を高めています。僕は、親中派ですが、決して国益放棄派ではありません。たとえば、日中国境付近での石油資源争奪問題なら、対話とか抗議なんて言ってないで、さっさと、掘削設備の建設を強行に着手してしまえばいいと考えてるくらいです。その上で、中国側に笑顔で、「やっぱり話し合いましょう、お互いのために」と語りかけたほうが、よっぽど解決は早いと思います。戦略的スタンスと言う点で、ぜひ、米中関係の駆け引きを学んでいただきたいと思うのは僕だけでしょうか。

 

◆ 極東ブログ 「ブッシュ・胡錦涛会談」
“ブッシュ・胡錦涛会談はなんだったのだろう。昨今の課題としては、イラン問題が焦点になるだろうに。”・・骨太のブログで勉強になります。この会談は、両者にとって重要なパフォーマンスになったでしょう、多分。

◆ ぺきん日記 -中国/北京より
“ 歓迎式典でのこの二つの出来事は、予期せぬハプニング”。・・具体的にはこんなことがあったんですね、知らなかった(笑)。

 

 

 

Posted by cancheer 04:01 PM | 固定リンク
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Posted at 2006.04.25 00:01
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