cancheerの考え方
タイトル

Hot wiredの突き抜けたニュース

日付

2005.10.29

最先端のニュースに興味はおありでしょうか。いやいや、何も難しいことではありません。たとえば、こんなタイトルを見て、どう思うかです。
“オレゴン州の片田舎にある「世界最大のホットスポット」”
“中国『イーベイ』に赤ん坊「出品」”
“日本風の"幽霊"が表示される携帯ウイルス”


新コーナーの「本物の英語」がお届けするのは、
映画・雑誌・洋書などのガイダンスです。。

ホットスポットとは、無線LANでネットがつながる場所のことです。

こうした絶妙なタイトルは、創作の賜物ではありません。ちゃんとした雑誌のニュースとして、事実を伝えたものです。


「Hot Wired Japan」とはサイトで、海外の「Wired」の日本版です。「Wired」は、雑誌(a full-color monthly magazine)と、サイト(on-line periodical)をもつ1993年創刊の情報メディアです。IT系の情報ニュースを伝えているというイメージでしたが、実際の記事を読むと、ITに素人の方でも十分楽しめるものです。


さて、僕は、このサイトの最大の特徴として、英語の原文表記が可能な点を挙げたいと思います。すなわち、英語の原文と翻訳された日本語を見比べるだけで、英語の勉強になるのです。


たとえば、“中国『イーベイ』に赤ん坊「出品」”とは、原文でも、“'Buy It Now' Babies in China”です。



The ad was deleted shortly after it was placed and relevant information has been turned over to investigators.

この「出品」は掲示後すぐに削除されたが、関連情報が捜査当局に提出された。



「〜後すぐに」とは、この文脈では、“shortly after…”なんですね。その他この記事では、「出品」が“ad”、「掲示」は“placed”が用いられました。僕が知らなかったのは、「提出」が“turn over”だったこと。

そうか、思い出しました。“turn over”は英辞郎で見ても、30を越える訳語があてられていたのです。この場合は、次の訳語がぴったりですね。

【句他動-13】 (犯人・容疑者を警察に)引き渡す、突き出す



Media reports said the ad offered baby boys for 28,000 yuan ($3,500) and girls for 13,000 yuan ($1,600), reflecting the traditional Chinese preference for males.

複数のメディアが報じたところでは、男の子には2万8000元(約40万円)、女の子には1万3000元(約18万円)の即決価格が付けられていたという。この値段の差には、男の子が好まれるという中国の昔からの傾向が反映されている。



子供を出品とは驚きのニュースですが、“offer”の一語で、「即決価格をつける」の意味になるのは知りませんでした。“traditional preference”で、「好まれるという昔からの傾向」。日本語になると、少しくどいですね。





次のニュースは、オレゴン州の片田舎にある「世界最大のホットスポット」、英語の原文では、“Wi-Fi Cloud Covers Rural Oregon”です。



a wireless cloud that stretches over 700 square miles of landscape so dry and desolate it could have been lifted from a cowboy tune.

カントリー曲の歌詞に出てきそうな、約1800平方キロメートルの、人がほとんどいない乾いた土地で、無線ネットワークが利用できるのだ。


ひえ〜。1800km2と言えば、大阪府とほぼ同じ広さです。「無線ネットワーク」のことは、タイトルにもあった“wireless cloud”という表現を使うのですね。なにせ、彼らにとっては“web site”(ウェブサイト)が、「蜘蛛の巣」ですから。

“stretch”はその後の“over”と合わせて、すごく広い範囲に、というニュアンスを伝えています。僕はつねに、英語の語順の日本語で考えようと提案していますが、この例文にあてはめますと、

“stretches over 700 square miles of landscape so dry and desolate”
「その広がりは1800km2を越えた一望できる範囲で、めっちゃ乾燥し、荒涼とし」


英語の原文の順番だと、「何にもない見渡す限りの大地を、目に見えない無線のみが覆っている」、と、とてもリズムカルに伝えていると思います。しかし上記翻訳文は非常に工夫されているとは言え、やっぱり原文にあたって初めて伝わってくるものがありますね。

その後にくる、「カントリー曲の歌詞に出てきそうな」がさらに、読み手の想像を助けています。英語らしい順番なら、「(それは)たとえれば」“lifted from a cowboy tune”のようなもの、となります。後ろで表現されているからしっくりくるのです。



While his service is free to the general public, Ziari is recovering the investment through contracts with more than 30 city and county agencies, as well as big farms such as Hale's, whose onion empire supplies over two-thirds of the red onions used by the Subway sandwich chain. Morrow County, for instance, pays $180,000 a year for Ziari's service.

ジアリ氏は一般市民には無料でサービスを提供し、30以上の市や郡の当局、サンドイッチ・チェーンの『サブウェイ』で使用するレッドオニオンの3分の2以上を供給しているヘイル氏の農場のような大農場と契約を結び、投資を回収している。



「一般市民」は、“the general public”。
「契約を結び、投資」は、“investment through contracts”。
「大農場」が、“onion empire”(帝国)と表現されているのも面白いですね。

大農場にも →誰の?→ Hale氏の 
      →何の農場?→オニオン畑 
      →それで? →(しかも)2/3のレッドオニオンが
      →どうしたの? →使われている 
      →誰に? →サブウェイに

英語の順番で、細切れに訳出ししてつなげると、話が非常に整理されたと思います。引用文中の翻訳も忠実に訳すために、非常に苦労していますが、決して、理解しやすい日本語とは言えないですよね。


日本語の訳文より、英語のほうが分かりやすい。そんなことは多々あります。たとえば、無理やり翻訳したような日本語文だと、「赤くて、タオル地で、彼が昨日くれた、だけどその辺のスーパーでも売っているハンカチ」などと紹介されても、ハンカチの言葉が一番最後にきてしまっては、聞き手はなかなかイメージを思い描くことはできません。しかし、英語ならきっと「赤いハンカチで、タオル地なんだけど、よくスーパーで見かけるじゃん、それを彼がくれたんだけどね・・・」という順番になるはずです。


英語の文書をいちいち、日本語の順番に直すのではなく、英語のままの順番で訳してみる。それをお勧めします。


いやあ〜、このニュースそのものが非常に面白いです。ぜひ、リンク先にて全部読んでみてください。無線ランのカバーエリアなんていうと、ついつい、大都市のど真ん中をイメージしてしまうのですが、大都市ではお金をとりづらく、特定の契約者がいる田舎ではビジネスになるというのも、確かにうなずける話です。

ちなみに個人的な話になりますが、以前の仕事で、害虫監視の事業のお手伝いほんの少しやったことがあります。そのときも、通信の技術と、農場というキーワードが出てきて結びついたとき、非常に新鮮な印象を受けました。農薬を農場全体に、目分量でばらまくのではなく、定期的に通信手段を仕掛けた農場の各所から、害虫の動向をいち早く知らせてもらうのです。場所さえ特定できれば、そこだけに農薬をまく。その仕組みで、人件費をかけずに、農薬の投入量を最小にできるというアイデアだったのです。


う〜む。新しい技術と、伝統的な仕事の融合なんて、僕は、とても大好きですね。それを報道してくれるホットワイアード、僕は大好きです。


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Posted by cancheer 06:32 AM | 固定リンク
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