cancheerの考え方
タイトル

エリザベスタウンに見たアメリカ的癒され方

日付

2005.11.27

「エリザベスタウン」(Elizabethtown)という小さな街での数日間が、天国から地獄への悲哀を味わった若者の心を癒しました。アメリカンドリームを手にしつつあった彼が、アメリカンフィアスコ(大失敗)とも言える奈落の底へと突き落とされ・・生きていく希望をなくしかけていたのです。


「本物の英語」がお届けするのは、
映画・雑誌・洋書等のガイダンスです。

"As someone once said, there's a difference between a failure and a fiasco,"
(誰かが言ったんだ、違うよって、失敗と大失敗の間では)

主人公ドリューDrew Baylor(Orlando Bloom)がそう口にすることで展開されるこの物語は、世界的な靴メーカーのスターデザイナーが転落するところから始まります。史劇がすっかり板についていたオーランドブルームですが、多少にやけたその表情が、若輩のまま頂点で輝いた人物像とずばり重なっていました。


“The company has lost $972 million on the development and launch of Baylor's atrocious shoe.”

この巨大企業が蒙った損失は約10億ドル。魔法の靴が完成したと、大歓声を上げていた開発チームですが、ふたを開けて見ると返品の山。何ともひどい(atrocious)商品となったものです。“million”(百万ドル)じゃない、“billion”(十億ドル)だ・・。日本円なら、1000億円を超える額です。どんな大企業でも、ぶっ倒れてしまうほどの数字ですよね。こんな損失が出るほどの大仕事をやってみたい(笑)。






大失敗とは、みんなからの期待を集め、果敢に挑戦できた者たちのみに許される経験です。僕の「夜明け前」的にも、ジーンとくる言葉です。挑戦できる人間や、責任を背負っている人間に対して、僕は、心からの尊敬と、できる限りの協力を奉げたいといつも考えているからです。

さて、映画のストーリは、いつものようにサイトを引用しながらご紹介していきましょう。映画の公式サイト(米国版)にはプロダクションノートにこうあります。


---Production Note---

A uniquely crafted comedy set in the key of life,"
ユニークな技巧作品に仕上がったコメディの鍵は、「活きる」

Elizabethtown" is the story of a truly unexpected romance
この物語は、本当に予期しないロマンス

that develops against the backdrop of a hilariously elaborate memorial.
進展の仕方も背景とは異なる 愉快で精巧な記念物とは

A life-affirming, comic fable that takes on matters of life and death in a suprising and heartfelt way,
人生を肯定する コメディタッチの物語がテーマにするのは生と死  意外で、心温まる

"Elizabethtown" is the journey of a young man turned in an unexpected direction and
本作が、若い男の旅を描いており、予想外の方向へ

the woman who helps him brighten his outlook on the world around him.
女性は、彼を助け 開かせる 彼の視界を 周囲の世界へと


映画評論サイトからも引用してみました。


Drew (Orlando Bloom), the young hero of Cameron Crowe's enchanting new comedy, "Elizabethtown,"
ドリューは、若い主人公 キャメロン監督の 魅力的なコメディ

is a former golden-boy designer of a Nike-like Portland shoe company
かつての大物デザイナー ナイキのような靴メーカーで

whose six-year-long, personal project has just produced the Edsel of tennis shoes.
彼の6年に及ぶ大事業が作ったのは、大失敗作 テニスシューズの。

Not just a flop or even a spectacular failure but a billion-dollar-losing "fiasco"
だだの「失敗」じゃない、見事な「失敗」でさえない、一千億円に及ぶ「大失敗」だ

that is about to be screamed from the covers of the nation's business journals,
大騒ぎになろうとしていた 特集に取り上げられたから 全国的なビジネス誌で。

make his name synonymous with catastrophe and leave him no career option beyond hari-kari.
名前を成したのと同様の大変なこと 彼はキャリアを失う 切腹で。

(以上、SEATTLE POST-INTELLIGENCER MOVIE CRITIC。)

そう、だからやけになった彼は絶望の淵で、自殺マシンを作ってしまいます。そして刃先をみずからに向けようとした瞬間、彼の携帯電話が鳴り出しました。



And just when it seems things can't get worse,
まさに、事態が最悪だというところで、

he gets word that his father has dropped dead while visiting relatives in his Kentucky hometown of Elizabethtown,
彼が得た知らせは、父の死だった そして訪問することになる 親戚を ケンタッキーの小さな町 エリザベスタウン

and, as the oldest son, Drew is expected to journey there and take care of the funeral arrangements.
長男だったドリューはそこへと向かう 行う 葬式の段取りを。

(同じ誌面からの続きでした)


悲壮感が漂ってもおなしくない話ですが、そこはこの監督にして、あの配役。とてもコミカルに作られています。

この作品の見せ場は、アメリカ南部の小さな村の伝統や文化の違いが随所に描かれていること。特に土葬と火葬の議論では、地元の人との論争になっていました。よく、日本人は、アメリカを歴史のない国なんて表現しますが、地域によってはあてはまりません。移民の国とは言え、祖国があり、移民一世たちの苦労があり、ある地域では歴史やつながりを重んじ、ルールや宗教なども市民生活の中に根ざしているからです。

その先端の先端に、世界のひのき舞台に立つドリューがいます。初めて会う人も、血のつながりがある親戚も、人生の接点があるということだけで、失意のどん底にあった彼に笑顔をふりまいてくれていました。それが、彼にとってのエリザベスタウンでした。





さあ、せっかくですから、火葬(Cremation)土葬(burial)との違いについて勉強しておきましょう。日本の歴史の中で火葬を広めたのは、仏教だとされています。ただ、庶民の生活の中では長らく土葬が一般的でした。火葬がすっかり定着したのは、近代以降です。しかし、キリスト教では長年火葬を禁止してきた経緯があり、現在のアメリカでも地域によって、火葬率には大きな隔たりがあるのだそうです。

北米火葬協会(CANA、The Cremation Association of North America)のサイトをのぞいてみましょう。


History of Cremation

Scholars today quite generally agree that cremation probably began in any real sense during the early Stone Age
今日の科学者が支持している考え方だが、火葬が始まったのは実質的には石器時代初期

-- around 3000 B.C. -- and most likely in Europe and the Near East.
紀元前3000年 ほとんどのヨーロッパや中近東で。

By the time of the Roman Empire -- 27 B.C. to 395 A.D. -- it was widely practiced,
ローマ帝国時代までの紀元前27年から紀元後の395年まで、広く行われていた。

and cremated remains were generally stored in elaborate urns, often within columbarium-like buildings.
火葬された遺灰は一般的には残された ちゃんとしたツボに たいていは地下室のような建物に。

However, by 400 A.D., as a result of Constantine's Christianization of the Empire,
しかし紀元後400年までに、(ローマ)帝国のキリスト教化の結果

earth burial had completely replaced cremation except for rare instances of plague or war,・・
土葬は完全に置き換わった 火葬から まれな場合を除き 疫病や戦争など。

Modern cremation, as we know it, actually began only a little over a century ago,
近代の火葬は、知る限り 始まってまだ100年足らず

after years of experimentation into the development of a dependable chamber.
試験的な試みから、信頼にたる場への発展へ

When Professor Brunetti of Italy finally perfected his model and displayed it at the 1873 Vienna Exposition,
イタリアの教授が ついに完成させた 彼のやり方を そして発表した 1873年のウィーン展覧会で。

the cremation movement started almost simultaneously on both sides of the Atlantic.
火葬の動きが始まったのは、ほぼ同じ時期だ 欧米ともに。

(以上、CANAが記す「火葬の歴史」です。)





“CREMATION vs. BURIAL”のサイトも面白いですから、紹介しておきます。あなたはどっち!なんて感じです。ちょっと長いので、リンク先の中ほどまで読み進めてください。そこに、次のタイトルがあるはずです。

“Is it Wrong for Christians to Choose Cremation?:”
(悪いことなの? キリスト教徒が火葬を選ぶのは。)

宗教の教義との整合性を図ることは、信徒にとって非常に大切です。現在、アメリカでの火葬率は25%を越えたぐらいだとされていますが、2010年には、40%をとの声も上がっています。


また、僕の好きなBBCでも、要点が整理された特集ページが組まれています。

“Cremation versus burial”


The dramatic swing towards cremation has happened in less than two generations.
劇的な変化が 火葬へ 始まったのは まだ二世代に満たない。

After World War II, the Government and local authorities encouraged it as an efficient and convenient method of disposing of the dead
第二次大戦後、政府や地域の行政は(火葬を)推進  効率的かつ便利な方法として 死体の処理に関し

and as a way to providing and maintaining cemeteries.
また目的は 提供・維持すること 墓地を。

The cremation movement's campaign slogan was 'Save the land for the living'.
火葬の動きは、スローガンとして「土地を大切に 生きているものたちのために」だった。

Today there is a trend back to inhumation or burial of the body in a grave. The rise in cremations has levelled out・・
今日、その動きは戻り始めた 埋葬のほうへ。火葬率は横ばいになっている

(以上、BBCのRelationship特集です。)


話を戻しますが、土葬にこだわるエリザベスタウンの人たちを前に、主人公ドリューは戸惑いながらも、父の遺言を尊重します。地元の人たちとドリューとの間で生じつつあった溝ですが、それもさすがはキャメロンクロウ監督。見事な結論へと導きます。


成功か、失敗かの世界で試され翻弄された彼ですが、“つながり”という人々とのきずなに触れたことで、みずからの傷が癒されていくのを感じます。


そして、彼の大失敗の傷を癒してくれたもうひとつのつながり。それは、偶然の出会いでした。飛行機の機内で出会ったお節介スチュワーデス(a flight attendant)のクレラ Claire (Kirsten Dunst)です。最後の場面で手渡された彼女の手作り地図は、ドリューにとっての新しい指針になります。なぜなら、生き続けていくことの答えが、その地図の中には見つけられたのですから。




▼こういう映画には、心を揺さぶるいいコメントが多いですね。

「キャメロン・クロウ節ともいえるコミカル×シニカル×ミュージカル」(最高の映画評ですね〜\(*^▽^*)/)
「自殺マシンが爆笑。それと長電話のシーン・・評価:久しぶりの満点」(笑えました)
「オレもあんな地図を手にしてみたい。」(本当に、あれはすごいプレゼント)
ロード・ムービー×ヒューマンドラマ×ラブストーリー「もう少し・・“重たさ”」(´-`)
「人生、山あり、谷あり。山高ければ、谷深し。」(この映画のテーマ)
「批評家からはボロカスに叩かれている本作・・十分納得の出来栄え」(賛否両論)
「トム・クルーズがプロデューサーとして参加・・いいところに目をつけ」(商売感?)
「過剰な演出を除けば割りと安心して観られる映画で」(過剰・・かな?)
「それほど人生を考えさせるという映画ではなかった・・恋愛映画」(確かに)
「喪中の過ごし方の違いがとても面白かった」(葬式への考え方とかね〜)




Posted by cancheer 07:15 PM | 固定リンク
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「「USAのんびり亭」映画情報」のサイトから
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Posted at 2005.12.08 05:54
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Posted at 2005.12.10 01:39
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