cancheerの考え方
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感動作ではなく風刺作のオリバーツイスト

日付

2006.01.31


『オリバーツイスト』。19世紀に書かれた名作ですが、原作を読んだことはありません。ただ、19世紀のイギリスは、僕が一番興味をもっている舞台のひとつでもあります。歴史専攻にも関わらず、経済学に興味があった僕には、産業革命の後のイギリス社会の変容と、民主主義の萌芽とがどのように関わったのか、とても気になっていたからです。


ニュースから、映画・雑誌・洋書のガイダンスまで。


孤児院を抜け出したオリバー。当時の孤児院とは、地域の連帯が崩壊した時代に登場した保護施設だったのですが、実態は、映画に描かれた通りの「未成熟」なものでした。ロンドンへとたどり着いたオリバーは、疲労と戸惑いの中で途方に暮れてしまいます。幼い彼にとって、何をすればいいのか、どこに行けばいいのか、まったく検討もつかなかったようです。そんな初心な彼は、幸か不幸か、フェイギン率いる窃盗団で生きる糧を得ました。体が不自由なフェイギンが考えたのは、社会からあぶれた子供たちを使っての犯罪行為だったのです。



映画では、フェイギンの描き方が絶妙です。人がいいのかずる賢いのか、子供好きなのか悪党なのか、ひと言ではなかなか判断できません。彼が、子供の命を救ったのは事実です。そして犯罪者として育ててしまったのも事実です。ルール内での自由な生き方を是とする「民主主義&市場経済」。その萌芽の中に生まれた、オリバーのような時代の落とし子たちは、他に生きる手段がなかったようです。


●オリバーツイストで学ぶ資本主義と民主主義の基礎
    〜英語で歩く、噂の現場〜『洋画でちょいびき』

『オリバーツイスト』。文豪(原作者)の名作を、巨匠(監督)が大作に仕上げた。それが、この作品のもっとも話題を呼ぶ点ではないでしょうか。「戦場のピアニスト」を手がけたポランスキー監督が、子供のために喜んでもらえるテーマを描きたいとして、この作品を選んだのだそうです。19世紀のロンドンを、セットとしてリアルに再現したことでも注目を集める同作品は、実は、日本人にはあまり馴染みのない時代を描いたものです。当時、日本は幕末、開国をめぐる激しい内乱の渦中にあり、諸外国の情報と言えばもっぱら植民地をめぐる列強の勢力争いに関するものだったからです。・・【続きを読む】
  ○教材としての「オリバーツイスト」。その問題提起。
  ○フェイギンは悪人か、善人か。
  ○「早業」アートフル・ドジャーの描き方
ぜひ、英語も楽しんでください。


19世紀も後半になると、イギリスでは、労働者による反体制運動が始まります。これは一種の社会主義運動として盛り上がり、政府も力で押さえつけることができなくなりました。劣悪だった工場労働者の環境は少しずつ整備され、20世紀になると、国民ひとりひとりが権利主張できる、普通選挙の時代の足音が聞こえるようになってきます。


残念ながら、オリバーも、そして原作者のチャールズ・ディケンズも、そんな時代を見ることはありませんでした。しかし彼は、その新しい時代を示唆するだけの十分な要素を、この作品に盛り込んでいます。虐待施設とも表現できる孤児院や、天国に思えるような窃盗団、そして市民からは無能で解決能力がないと見られている法廷まで、実に多くの皮肉めいた描写がなされています。この作品が、今日なお、リアリティをもって楽しめるのは、当時から百年以上経った今の社会でも、同様の問題点を抱えているからです。



最後の場面でオリバーが、逮捕され気の狂ったフェイギンに、祈りの言葉を口にするのは、当時の社会への最高の皮肉だと思います。悪党を悪党として描けないのは、社会の矛盾がそこにあるからです。原作『 Oliver Twist 』は、より詳細に書かれているようなので、ぜひ読んでみたいですね。




▼感想は色々ですが、感動作ではなく風刺作として見ればどうでしょう。

# オリバーツイストにはYahoo!公式ブログがあります。こちらへ【GO】

オリバー・ツイスト@映画生活

“時代の、人の浅ましさが凄まじくリアルに描かれています”
  →試写会帰りにさん
“私は9歳のとき『オリバー!』を観ている・・ばあやに連れられて”
  →池内ひろ美の考察の日々
“イギリスって階級社会・・日本人は問題意識として共有しがたい”
  →素通りしている場合かっ!!さん
“堂々たる演技を見せる主役・・どの場面を切り取っても絵になる映像の美”
  →高間亮行 世界遺産日記さん
“「あんたもね、いい年してるんだからちゃんと喋りなさいよ!」”
  →REI STYLE!さん、おすぎからゆうこりんへのひと言
“総合的にもミュージカル映画の『オリバー!』に軍配が上がりそう”
  →ネタバレ映画館さん
“ラストで泣ける映画・・それも空振り・・感動の域には届かない”
  →nao3 blogさん
“有名な物語・・文庫本のあまりの厚みにビックリして手に取った記憶があるくらい”
  →YEAH! ムービー・ウォッチング(s-woman.net)
“英語はかなり読みやすく、あまりつっかえずに読めました。理解度は8割。”
  →ペラペラ英語マスターへの道さん、原作を読んで。


Posted by cancheer 01:27 AM | 固定リンク
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