cancheerの考え方
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「表現の自由」という原理主義者

日付

2006.02.09


風刺画が好きなのは、僕だけではないでしょう。特に、欧米の風刺画と言ったらすさまじいものがあります。最近はパロディビデオも登場。ブッシュとケネディとの大統領選のさなかには、アメリカにいましたが、次から次へとパロディが生まれていて、飽きなかったですね。その辺のつまらない番組よりよっぽど面白い。

 

「まあ、いいじゃないか」という、気楽&独楽コメントコーナーは、
書評、社会評論などを前向きに行います。英語はお休みです。


表現の手段として、風刺画やパロディ映像は、僕たちの社会で十分な市民権を得ています。しかし、もちろんタブーは存在します。日本では皇室のことを悪くは言えないのもそのひとつでしょう。そもそも風刺とは、政治的、社会的、倫理的なメッセージをもつものですから、単なる嘲笑であってはなりません。それが、公共性の高い「メディア」で紹介される条件だとも考えています。


【仏2紙が風刺漫画を掲載、シラク大統領が非難】
・・ムハンマド特集号としたのは、政治風刺で知られる週刊紙の「シャーリー・エブド」・・午前中にほぼ売り切れ・・さらに増刷する予定・・一方、すっぱ抜きで知られる週刊紙「カナール・アンシェネ」も8日、全8ページの随所に、「悪魔的な絵」と書かれた検閲印のようなマークとともに、ムハンマド風の人物らを描いた漫画17点を掲載し、「表現の自由」に制限を加えようとするイスラム社会を皮肉った。(読売新聞、2006年2月9日)


さて、ムハンマドの風刺画問題は、さらに過熱する展開になっています。フランス紙の内容は、サイトでも見ることができます。僕らは、フランス語が読めなくても、掲載されている絵の意味くらいは類推できます。この情勢下では、十分なまでに過激であることが分かります。



イスラムにその教義の原理主義が存在するなら、大陸ヨーロッパは西欧的「自由」価値観の原理主義と言えなくもありません。「表現の自由」を守りたいという思いは、自由が奪われつつあるという危機感からくるものなのだそうです。


しかし、この事件に対する僕の見解は、ひとつの前の記事【GO】でも述べた通り、両者が「自由の乱用」と「宗教の動員」をともに慎み、被害が出ないようにしてもらうことです。政治の役割です。なぜなら、罪もない人が襲われたり、商売を奪われたりし、その被害額がそのまま上記のような新聞社の収益に還元しているように見えるからです。真面目にコツコツと生きている人が損をし、暴力や騒動を仕掛ける人が得をする状況は、「悪魔の所得移転」とも命名すべきもので、政府が傍観していいとは思いません。


僕が生まれて初めて自分で買った本は、小学校六年生の頃の、漫画『世界の歴史』『日本の歴史』(集英社)です。歴史が大好きでしたから、新聞配達までして全冊買いました。そのとき、イスラムの歴史に触れたところで、ムハンマド(預言者)の顔が黒く塗りつぶされていました。僕は初めて、イスラムの教義のひとつを知ることになりましたし、(おそらくは日本人しか見ないであろう)この漫画本でさえ、こうした教義に配慮していることに驚いたのを覚えています。


冒頭にも書きましたが、公共にばらまかれる風刺画の定義は、社会を良くしたいというメッセージが込められて然るべきです。混乱を招くことではありません。たとえばイスラム(原理主義)の何かを風刺したいなら、ムハンマドの顔を描かないで考えてみることはできなかったものでしょうか。そういう制約にこそ、僕は、風刺的な知恵が活きるときだと思います。メディアが「公共性」をもつと考えるのは西欧社会でも同じはず。この点では、事態収拾を図るためにも、早々に反省と謝罪をお願いしたいものです。



■ お知らせです

『夜明け前』の更新を十日間ほどお休みさせてください。多くの方には余計なことだったかもしれませんが、また、廃れたと思われないためです(笑)。今年に入って、一日のアクセス数が2000を越える日も出てきたこともあり、「忘れてしまわないでね☆」の意味もあります。その間、お時間がある方は、怒涛のひと言(皮肉・自虐)ブログ『成功は偶然、失敗は必然』【GO】をご覧ください。カテゴリーごとに古い順番に見ていただくと、いいかも。こそこそと書き溜めたコンテンツが少しずつたまってきています。目標1000件!
以上、失礼しました。





▼いつも通り、この件を考える上で参考となるブログをご紹介します。

“風刺とは・・ちょっと文句を付けたい・・「嘲笑的」はないでしょ”
  →沢山の想いと違いさんの鋭い指摘
“こういう事から第三次世界大戦なんて招いたら余りにもアホです”
  →Birth of Bluesさん「報道の自由・・遂に大炎上」
“イスラム世界の不安定さが、そのまま世界全体のの不安定さに”
  →週刊!Tomorrow's Wayさん
“欧州は掲載しなくても良い漫画を掲載してイスラム圏の不評を買う”
  →Letter from Ceylonさん
“日本でも皇室を風刺することはタブー、自由社会でもタブーが存在”
  →風刺画生活[itami.info]さん
“キリストと仏陀がムハンマドに対して「そう怒るなよ・・」という絵”
  →知れば誰でも激怒する、 これが中国だ!さん
“イスラム教各国・・独善主義が国際平和への障害になっている”
  → 海外旅行紀行・戯言日記、カーク船長4761さん
“ヨーロッパのメディアが原理主義的な傾向を捨てて・・”
  →たゆたえど沈まずさん
“3年前、攻撃的過ぎるとしてキリストの風刺画の掲載を拒否していた”
  →M.T.MJさん、問題紙ユランズ・ポステンのことです


Posted by cancheer 08:06 PM | 固定リンク
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ムハンマド風刺画、文明の対立に新たな火種。――炎上はいつ、止まるのか?
NHK-BS、ワールドニュースアワーなどで、 ABC、CNN、BBCなど、欧米のニュースを見ていると、 このところ、イスラム教預言者、ムハンマドの風刺画問題が かなりのボリュームで連日、伝えられている。――席巻している、と言ってよいほど。 日本のメディアでは、やや...
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BOUDOU暴動BOUDOU
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バーミヤンの石仏とパンダとタリバン
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