cancheerの考え方
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上海租界の歴史に吹かれて

日付

2006.02.24


上海と言えば、今こそ、改革「開放」中国の象徴ですが、もうひとつの「解放」劇でも、その序章にて、拠点とされた都市です。現在の共産党政府が、まだ小さな反政府勢力だった頃の話です。彼らが中国全土を解放するには、さらに長い年月が必要とされましたが、当時の上海は、時の公権力も及ばない、魔性の地だったのです。

 

「世界の空」カテゴリーでは、米国を除く世界をご案内。
メインは「新旧」と「資共」が奇妙に同居する中国です。


上海の歴史にも興味があったので、テレビ塔の下にある上海都市歴史発展陳列館(こちら旅の情報部へ【GO】)に行ってきました。入場料は35元ですが、塔の上部に上がるチケットとセットで買うと安くなります。租界前の時代の上海から順に展示されています。綿紡績の中心地となり発展を遂げる上海は、海へと出ていく交易基地としての役割も担うようになります。



アヘン戦争で西洋列強が勝利すると、上海には租界が形成されます。いわゆる植民地のようなものですが、近年の租界に対する評価は肯定的なものに変わっているようです。それは陳列館を観ていても分かりました。華やかな街並みがジオラマで再現され、先進的な文物・機能が、次々と上海に定着していった様子が描かれています。今日の発展の、まさに礎になった時代だと言えるでしょう。ただし、「中国人と犬、立入禁止」との看板が立てられ、屈辱的な扱いを受けていたことを、忘れてはなりません。この陳列館ではプラスの面にもしっかり光を当てつつ、民族的な誇りを失わせないような配慮がなされています。歴史は、後ろ向きに見てしまえば現代の束縛になりますが、前向きに見直すならば、プラスであれマイナスであれ、未来への知恵となるはずです。

     

日本が文明開化に至った時代にも、「外国人居留地」は貿易港付近に建設されました。僕らには決してマイナスのイメージはありませんね。中国の場合は、アヘンの輸入と蔓延という問題が根底にあったため、上海は一時期、魔の都という暗黒のイメージが定着しました。一方では、中国政府の権力が及ばないのをいいことに、共産党勢力が拠点とした時代もあったようです。


東アジアの近現代史を見つめる上で欠かせない要素が、この上海にはたくさん残されていることを、あらためて実感しました。


ちなみに、僕が大学のとき研究したテーマは、中国の近現代史でした。みんな経済学部だと思ってしまうらしいのですが、人文学部です!特に対象とした時代は、清末。中国南部から、大量の中国人が労働力としてアメリカ西海岸に売り飛ばされていたことがありました。しかも、それは半ば、公的な仕組みの中で平然と行われた国際間での労働力移動だったのです。当時、中国人を買いあさるために動いた組織が存在し、悲惨な船内での長い航路、アメリカに到着してからの過酷な現実などを、僕はあらためて知ることになりました。中国の近現代史の中で、上海が「魔都」として燦然と輝いた時代とは、国家も価値観も、そして社会秩序も大混乱の渦中にあったのです。まあ・・、大学時代の恩師たちから失格の烙印を押されかけた僕ですから、あんまり書くとさかのぼって卒業を取り消されかねません(笑)。これくらいにしておきます。

 


▼今回の上海関連お薦めブログはこちらの二つです。

# 中国見聞録 〜上海駐在生活日記〜
   “全国的に爆竹の解禁が進む中、上海市の花火爆竹ゴミは1,100トンに”
  →僕がいた元宵節のときも、0時前後まで花火の音が聞こえました

# Toriumi@Blogさん 
   “ 優秀な人は外資に行くらしい、ただし日本企業は好まれていない”
  →「僕の見た」五日間の上海。なかなか楽しく読めますよ

 

Posted by cancheer 10:52 PM | 固定リンク
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