cancheerの考え方
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「水辺」へと挑戦した生命たちの屍

日付

2006.04.15


「昔のことを知って、何が楽しいの?」とは、よく言われるセリフ。確かに、専門家のように極めようとしているわけでもなく、極めて中途半端(笑)。一応、専攻だった東洋史にしても、趣味にすぎない生物史にしても、子供が百科事典をむさぼるほどの感覚です。ただ、ネイチャーで発表された記事は、相変わらず、僕の心を虜にしてしまいます。

 

両生類へ進化途中の魚類化石を発見 胸びれに手首関節
カナダのデボン紀後期の地層(約3億8000万年前)から、両生類に進化する途中の新種の魚類の化石が見つかった。胸びれに、手首にあたる関節があり、前脚が誕生する直前の状態だった。手足がある両生類とひれしかない魚類の間には大きな隔たりがあるが、今回の発見で溝が埋まりつつある。米シカゴ大などの研究チームが6日付の英科学誌ネイチャーに発表した。 (朝日新聞、2006年4月6日)

 


進化の歴史とは、かつてNHKが制作した《生命40億年はるかな旅》シリーズ、『進化の不思議な大爆発 魚たちの上陸作戦』にも描かれている通り、生命の不思議な力を感じざるを得ません。まるで、神の啓示を受けるがごとく、変わりゆく地球環境に適合し、果てには、生命みずからが地球の環境を、生命の進化に適した方向へと誘導しているのですから。このまま行けば、未来はどうなるのか。そんな感心から、DVDまで購入した《フューチャーイズワイルド》も必見です。




今回、僕が見たのはネイチャーの論文を図解で紹介したタイム誌です。本誌には、この化石をもとにリアルなイラストで紹介された、“TIKTAALIK”のことが記事になっていました。375百万年前とされる化石には、ヒレと思われる箇所に、確かに、指・手首の骨らしきものが見えています。そしてその15百万年後、すでに発掘されている化石によると、手指は外からでも明確になっているのです。つまり、今回の化石は、今までに見つかっている“fish-tetrapod transition”(魚−四足動物の移行期)の一種らしいのです。

 

OUR COUSIN THE FISHAPOD
・・・reported last week in a pair of articles in Nature, was part of a creature that grew to at least 9 ft. in length and lived some 375 million years ago, just at the point in evolutionary history when fish were giving rise to the four-legged animals known as tetrapods・・・What really fascinates scientists about the fishapod is that it fits so neatly into one of the most exciting chapters in the history of life--when creatures that swam in seas and rivers gave rise to things that walked, ran and crept on land. The fishapod appears to be a crucial link in the long chain that over time led to amphibians, reptiles, dinosaurs, birds and mammals. (タイム誌、2006年4月17日)

 

TIME_fishapod.jpg

タイム誌の記事で興味深かったのは、当時の環境に彼らが適合した点です。たとえば、海や川があり、その周りが陸地になっている場所では、その間に、沼地や湿原地帯が広がっているのは、かつての普通の光景です。時には、川が増水し氾濫することもあったでしょう。生命にとって、変化の激しいこの場所は、陸地に進出する上でのひとつの障壁だったはずです。当時は、「魚」の時代です。わざわざ危険なこの地域に飛び込んだ生命は、一見、ワニのような見てくれで、ヒレをもったまま、目の位置を頭のてっぺんに持ってきた姿へと進化し、陸上への挑戦を始めたと言います。タイム誌は、彼らを、僕らの《いとこ》だと表現しました。

 

The fishapod was among the pioneering organisms to take advantage of an ecological frontier--the marshy floodplains of large rivers--that opened between 410 million and 356 million years ago during the Devonian period, known as the Age of Fishes. (タイム誌、同上)

 

タイム誌のほか、この“TIKTAALIK”のイラストを紹介しているのが、NATIONAL GEOGRAPHICです。ワニと言うより、魚のように見えるのは、描き手のイメージの違いでしょうか。こんなのが、足元の水辺にいたときのことを考えると、背筋がゾッとなりますが、紛れもない僕らの遠い祖先なのですね(笑)。

 

◆ 時評親爺
“化石写真を見れば、なるほど『nature』の言うような「ワニ似」ではあるなぁ”。親爺風(笑)地質時代区分表が分かりやすい。今回の化石は、デボン紀。僕の浅はかな知識で言えば、カンブリア紀(生命大爆発)の後の後、そしてジュラ紀(恐竜時代)の前の前・・くらいという感じ。

◆ 古世界の住人
“4本の足で陸上を歩く動物にもっとも近い魚・・新種の魚類化石が発見された!!”と、平易な解説付き。必見!同サイトによると、これまでにもたくさんの化石が、魚類と両生類との移行期に存在していたようです。

 

 

タイム誌のおかげで、“Paleontology”という単語の意味を知りました。古生物学、“study of ancient life”のことですね。この単語では、実は有名なサイトがあります。思わず、色々見入っちゃいました。よろしかったら、どうぞ。

 


The Paleontology Portal
古生物学のポータルと自称するサイト。解説、写真、インターフェイス超充実。それもそのはず、古生物学会(the Paleontological Society)をはじめとする有名団体が運営しているほか、資金面では、米・国立科学財団(National Science Foundation)のバックアップを受けています。

 

Posted by cancheer 05:37 PM | 固定リンク
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3億7500万年前の手首持つ魚の化石
ちょっとネタ切れ気味の春ながら(笑)、6日付毎日新聞がアカデミックな記事を写真(想像図)付きで配信している。あの泣く子も黙る?科学誌『nature』の「水から這い出た魚」(The fish that crawled out of the water)と...
「時評親爺」のサイトから
Posted at 2006.04.15 19:58
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