cancheerの考え方
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民主党は「ニュースの天才」に学べるか

日付

2006.03.06


僕は選挙になると、基本的には最大野党を応援します。一応、政権公約は見ますが、できれば野党案のほうがマシに見えてほしいと願いつつ見比べます。やはり少数でも、チェック機能を働かせる国民は必要でしょう。だからこそ、社会党の頃に比べ、ずいぶん良くなったと考えていた民主党に期待していたのです。

 

「まあ、いいじゃないか」という、気楽&独楽コメントコーナーは、
書評、社会評論などを前向きに行います。英語はお休みです。


しかしこの週末、「民主党の全面降伏」の文字がメディアに躍りました。何度も繰り返し報道される永田議員のガセネタメール問題。これだけの大問題に発展すると考えた人は、当初、当事者も含めてそれほどいなかったのではないでしょうか。個人的には、大変残念ですが、民主党が掲げた例の「4点セット」もことさら大げさだと考えていた僕にとって、今の状況と大差なかったような失望感です。なぜなら、疑惑追及や真相究明とは、万年野党のやり方だからです。民主党は二度の選挙で、マニフェストをほとんどいじらず戦ったのですから、予算案の議論で対案をより具体的に示してもらいたかったです。


さて、今回のテーマはその永田メール問題に揺れる民主党。失望とは言いつつ、関連情報を紹介してくれるブログを読むのは非常に面白かったです。ただ、なぜ、このようなガセネタで国会が空転してしまうほどの騒ぎになったのでしょうか。


よくよく考えれば、永田議員の断定的な口調が問題を大きくし、前原代表の肩透かしの発言(「党首討論を楽しみにしていてください」)がこの戯言を大問題にしました。これって、あるパターンに合致します。「信用」連鎖というバブル現象です。



永田議員は、仲介者とのやりとりで怪しいメールを安易に「信用」してしまいます。この問題で引責辞任した野田元国対委員長は、疑惑追及の実績を持つ彼を「信用」し、発言の仕方までは確認しなかったようです。そしてもともと強気一辺倒の前原代表は、同党議員をかばうことで党内の支持を維持しようと、みずからを「信用」し過ぎました。


ちょっと言い換えてみましょう。功を焦ってウソ(半信半疑な情報)を信用し、複数の人のチェックが働かず、そして何とかなると自己を過信した行為。これが民主党に最悪の結果をもたらしました。僕は、姉歯問題について書いた【GO】とき、小嶋社長のことを取り上げましたが、同じ構図だと考えています。ガセネタを持ち込んだとするフリーライターも、厳しい担当者へのあてつけに耐震データを偽造した姉歯氏も、その後の広がりは似たりよったりに思えるからです。


僕は、ふと「ニュースの天才」という映画作品のことを思い出しました。以下に紹介したブログにも粗筋が書かれていますので、詳しくは触れませんが、ガセネタを書き続けた若手ジャーナリスト、スティーブン・グラスの事件を紹介した作品です。捏造記事や彼の存在はすべて実際にあったことです。ちょうど、今日のようなネット時代に至る寸前の頃で、彼の捏造もずいぶん幼稚に見えましたが、そこには、人々によって勝手に創作された「信用」の連鎖があったことに着目してみました。



実名記事を書くという職業への「信用」、気配りができて気弱そうに見える彼への「信用」、そして、人望の厚い前編集長が彼を信用してしまったという「信用」。この「信用」の連鎖が続く限り、その権威ある雑誌社社内からは彼を疑うという発想は出てきませんでした。ところが、彼の捏造記事は外部から簡単に見破られてしまいます。それは、スクープを奪われてしまったことで責められた他社の記者が、腹立ちと不信から出発してスティーブの記事を読み直したからです。


人間はたいていの場合、物事の真贋を決める前に自身の態度を決めてしまいます。偏見とはそういうものです。しかし、民主党が健全な組織であれば、「信用」の連鎖に歯止めがかかったはずです。その民主党がなぜ、「信用」の暴走に至り、瞬く間に破裂してしまったか。党内事情に詳しくないので僕の勝手な想像ですが、組織の目的を誤解されているからだと思います。ちなみに、組織とは、目的とする成果に届くように、みんなで行動を積み重ねていく集団です。



野党という組織は与党の疑惑を追及することが仕事ではありません。対案提示であったり、与党案の問題を提起することです。仮に、不法行為の疑惑があっても、罰せられるのは議員個人なのですから、早々と司直の手に委ねればいいのです。それより、疑惑やそれに類する問題に対して、与党の姿勢を正し、改善策を促すことが重要です。たとえば、容疑者となった堀江氏はもともとグレーゾーンでビジネスをしていた人です。そんな彼を担いだ与党の姿勢を問うたり、堀江氏流のビジネスに対する与党の現在の見解を明確にすることが大切なのであって、金品のやりとりがあったと一方的に決め付けて国政調査権を迫ることではありません。



その野党という組織の役割をはき違え、永田議員のガセネタメールに基づく追及を二度も繰り返させ、おまけに代表までが「信用」を無意味に膨らませてしまう。それは他でもない、この疑惑を追及することが目的だと勘違いしたからです。

「ニュースの天才」では、後を継いだ編集長が比較的中立の姿勢で、その問題記者スティーブと接します。編集長が考えたのは、真実を伝えなければならないという会社の使命です。だから、ひとつひとつのスティーブの記事が精査されることになりました。捏造が発覚した後の問題の広がりへの懸念や、スティーブへの同情を優先させてしまっていたら、事件を明るみにする以上に、雑誌「The New Republic」【GO】の命運を危うくしていたことでしょう。

皆さんは、民主党の対応を、どのようにお考えになりますか。


“5年分の『きっこの日記』を通読して何が読み取れるかまとめただけ”
  →松永英明さん、永田メール問題で話題の「きっこ」を分析
“永田議員に「堀江メール情報」を提供した男の正体”
  →情報紙「ストレイ・ドッグ」、山岡俊介さんの取材メモ
“永田町では「西澤孝」は「藤田」と呼ばれ・・「きっこ」はそれを裏も取らずにタレ流した”
  →Here There and Everywhereさん、噂のサイパッチによる”きっこ”の嘘の検証


ニュースの天才@映画生活

“何故彼が捏造に至ったか、あまり深く描かれていない”
  →わたくしぶろぐ おもしろぶろぐさん
“DVD特典・・スティーブン本人のインタビューは何だったんだ”
  →映画漂流記さん
“監査やチェックという部署は、独立してあるべきと再確認”
  →Private Psychedlic Reelさん「すぐにばれる時代」
“「ジャーナリズム論を語るなら、これを見ておいた方がいいですよ」”
  →[R30]さんの映画評、一年前の読み応えたっぷり解説

 

Posted by cancheer 07:33 AM | 固定リンク
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(動画)週刊誌も騒ぎ始めた永田ガセメールのネタ元・西澤孝クン/永田クンの2度目の会見
噂のサイパッチによる”きっこ”の嘘の検証きっこの日記より <偽物メールを永田に渡した人物の名前が、フリーライターの「西澤孝」だなんて大嘘を書いてる週刊誌やニュースサイト??
「Here There and Everywhere」のサイトから
Posted at 2006.03.06 11:29
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